私の介護歴は30年を超えますが、未だに「若くていいね。」と言われます。 高齢化率の上昇は、私の目の前の利用者様の平均年齢に比例しているようで、かなり大きな声でお話をすることが多くなりました。 介護の話をすると、とても難しいお話をされる方がいらっしゃいますが、介護はいたってシンプルです。利用者の生活の中にたくさんの笑顔があるように考えればよいのです。 寝たきりの母を持つ私ですが、毎朝の口腔ケアの時のやり取り（母はあまり話すことができません）は、楽しい時間です。「口を開けてお母さん、もっと、もっと大きく。」と言うと、嫌な顔をして、時には私を睨んだりします。「私悪いことしてないよね。」「怖い顔しているよ。」というと、少しだけ笑った顔をする時があります。この一瞬が私へのご褒美のような気がします。介護される方もする方も、この笑顔でさまざまなことが解決されるような気がします。 認知症の方とお話をするときも、混乱や、不安を訴える方のお話をしばらく聞いて、「私に任せてください。」「ところで、今日は何食べます。ステーキ、お寿司、それともお粥にする。」ふっと表情が緩んで、食事の話で花が咲きます。不安でいっぱいの方に、少しでもほっとする時間を過ごしていただきたいと思います。 終末期の方にも、安心と安寧の時間を多くして差し上げたい。そのことが一番大切であると思っています。この日本を支え、家族を支え、社会を支えてきた先人たちに敬意を払い、笑顔の多い生活を考えていきたいと思います。 皆様もご承知の通り、これからますます介護人材が必要になります。 私共の職能団体は、介護福祉士及び介護職員の価値を上げていくことを目指しております。介護職員の処遇を改善し、この仕事が、さまざまな面からみて、魅力の多い職業であることを、皆様に伝えていきたいと考えております。 読者の方が、興味を感じてくれたら、幸いです。─ 4 ─公益社団法人日本介護福祉士会 会長長崎県生まれ。株式会社かいごラボ 代表取締役。一般企業に就職し、結婚出産を経て病院のケアワーカーとなる。その後老人保健施設で10年、特別養護老人ホームで12年・施設長としても10年勤務した後、独立し、2019（令和1）年8月に株式会社かいごラボ設立。静岡県介護福祉士会理事を経て会長就任。現在公益社団法人日本介護福祉士会会長。保育・教育・福祉系をめざす人へ及川 ゆりこ さん「介護は魅力ある仕事です。」
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