分野別ガイドブックNo5
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3 フランスのオートクチュールデザイナー、ピエール・バルマンに、このように言われたことがあります。「この世で最も美しいものは花嫁姿だと思っている。自分はデザイナーであるが1年に2〜3回しか花嫁衣裳を作ることがない。しかしあなたは365日ウェディングドレスに囲まれ、それを着るお嬢さんたちの笑顔に包まれている。何と羨ましい人生か。」それから約半世紀、喜びの時も、苦しいときも、私はこのバルマンの言葉を思い出します。当時、クリスチャンディオールと並んでオートクチュールの代表であり、日本の香淳皇后のドレスもデザインした人が「羨ましい人生」と言ってくれたのですから。一人の人間にとって、ウェディングは第二の人生の出発点です。愛する人と共に、家族や友人達に囲まれて、新しい第二の人生へと第一歩を踏み出す記念の祝祭。それは、ご当人たちにとっても人生の最高の日であることは勿論ですが、そのイベントをお手伝いする私たちにとってもハッピーな時です。 私はドレスのデザインをする時に、「このドレスを着た人はどんな気持ちなのだろう」と想像して、ワクワクして絵を描き、生地をカットしています。そして、美容師さんやフラワーデザイナーの方々と、「このドレスにはこのヘッドピースを」とか、「こんなブーケを」と語り合っています。そして当日、ライトに照らされて登場する美しいカップルの姿を目にする時の感動は、言葉では言い尽くせません。勿論ルックスだけでなく、音楽、照明、演出を行うウェディングプランナーの方達の力により、会場は大きな拍手に包まれるのです。宴が終わって、「皆様、ありがとうございました」と、お礼を言われるカップルや、ご両親の瞳に涙が浮かんでいることも多いです。涙を見せるほどの感動を与えられる仕事は滅多にありません。 私はブライダルという今の仕事を辛いとか、大変とか、嫌だとか思ったことは一度もありません。勿論、限られた時間や予算の中で大変なことはよくあります。しかし、それをマイナスに捉えたことはほとんどないのです。当日のお二人の晴姿、笑顔を思い浮かべると、そんなことは吹っ飛んでしまうのです。「人を幸せにすることが自分の幸福」と思える人は、この仕事に向いています。これからブライダルの研修を終えて社会に出て行く皆さんに、心からのエールを送ります。「日本のウェディングって、とても美しい」と世界中の人に思ってもらえる婚礼衣装に、美容に、花に、プランニングに頑張ろうではありませんか!全日本ブライダル協会 会長かつら ゆみ▶日本のブライダルファッション界の第一人者であり、草分け的存在。美しブライダルシーンの創造者として世界各国30以上の都市でブライダルショーを行い、結婚式に対する夢を与え続け、ブライダルの伝道師と言われている。1993年前ローマ法王パウロ二世のイースター祭に着用する服のデザインを献上。2006年ニュースウィーク誌「世界が認めた日本人女性100人」の一人に選出される。2011年東日本大震災支援として被災地において、結婚式をあきらめていたカップルに市民結婚式をプレゼント。観光・語学・国際・イベント・ビジネス系をめざす人へ桂 由美 さん お客様と共に ハッピーになれる世界

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