分野別ガイドブックNo5
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 私は子供のころから乗り物が好きでした。多くの人は幼稚園に入るころには他の趣味やスポーツに関心が移るものですが、そのまま鉄ちゃんのまま歳を重ねて今に至っています。就職も鉄道会社への就職を目指していました。アルバイトも自宅最寄りの日本国有鉄道(国鉄、現JR)の駅で朝の通勤ラッシュ時間帯にホームで乗客案内(昔は尻押し部隊と呼ばれていました)、年末年始や夏休みは観光地の駅でホーム、改札口での業務に就いていました。国鉄〜JR東日本に就職後は現場で駅員や乗務員として勤務ののち主に旅客営業や旅行業に関わってきました。自分の企画した列車、フリーきっぷやツアー商品の売れ行き、データ、お客さまやフロントの反応を日々チェック、時には自ら現地に足を運んで自分の五感で確認して、次の施策に活かしました。 鉄道や旅行商品は無形のものでサービスを提供したらやり直しや保存が利きません。お客さまから高い評価をいただければ次のご利用につながりますし、売り上げも増えていきます。一方、期待外れと言われたり、利用しにくかったりトラブルを起こすとすぐにお客さまにそっぽを向かれますし、良い企画と気配り心配りで努力すれば収益も上がります。観光により人で賑わい、地域が活性化していく現場にも多く立ち会うことができました。お客さまや地域の皆さまの笑顔が見られる、こうしたやりがいを重ねながら自分自身も成長してこられたと感じています。観光は交流産業とも呼ばれます。お客さまとだけでなく同じ志を持つ仲間、提携先、取引先の多くの関係者と切磋琢磨しながら観光による地域活性化に取り組むことは何にも代えがたい経験となって今の私に息づいています。例え競合企業であっても、激しく議論した相手でも今は何でも話し合える無二の親友になっている人は数え切れません。特に私は2度の海外勤務を経験することができました。そこで得た経験、人脈すべてが私の財産です。 観光産業はコロナ禍で大変な打撃を受けました。現在、急速な回復途上にあるとはいえ様々な課題を背負いながら日々奮闘しています。就活をする皆さんも観光産業の将来はどうなのだろう、働きがいは? 生活設計は? 自分たちが活躍できる分野は? 私たちも先輩として皆さんの疑問や不安を払しょくして観光を未来への希望を持て、将来皆さんが主役になれる産業に作り上げて、皆さんをお迎えしたいと思っています。是非、観光産業へ。 一緒に仕事ができる日を楽しみにしています。公益社団法人日本観光振興協会理事長さいみょう ひとし▶横浜市立大学商学部卒、1985年日本国有鉄道入社。JR東日本では主に輸送計画、営業、旅行・観光事業に従事。JNTOシドニー事務所、JR東日本訪日旅行手配センター所長。新潟支社営業部長、本社観光戦略室長、ニューヨーク事務所長、常務執行役員国際事業本部長等を経て2023年6月より現職。国際公共交通連合(UITP)名誉議長。JR東日本の広聴システム構築、ツアー造成を担当したのをはじめ、インバウンド事業の立ち上げ、海外プロモーション、東北新幹線八戸開業、湘南新宿ライン新設、英国や東南アジアでの鉄道事業、インドへの新幹線インフラ輸出等の他、日本経団連で国などへ観光政策の提言を行った。JR東日本交響楽団でヴィオラを演奏、元団長。4観光・語学・国際・ビジネス系をめざす人へ最明 仁さん未来への希望を持て、皆さんが主役になれる産業作りを一緒に!

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