分野別ガイドブックNo8
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5日本自然保護協会は、日本の自然を守る活動をする環境NGOで、山や海や動物・植物が好きなスタッフ約30人がいます。自然が好きで自然をよく知っていることは必要ですが、それだけでは自然は守れません。ある森を見て、「鳥がいて、花が咲くし、散歩できていい」と思う人がいる一方、その場所が「ショッピングモールや病院ならいいのに」と思う人がいるように、自然に対してさまざまな異なる考え方があるからです。 白神、知床、屋久島などの世界自然遺産も、かつては開発計画がありました。自然を巡る対立が生まれる前に、自然が保全される社会になるように環境教育やしくみづくりに取り組んでいますが、開発計画は次々生まれてきます。そのたびに、その自然のどこがどう大事なのかを明らかにし、意見が違う人たちと議論して、地元の方と一緒に解決の道を探ります。開発が自然やくらしをどのように変えるかを予測して、影響が少なくなるよう検討する環境アセスメントのような制度やしくみは、議員や行政の人に説明して新たに作ってもらいます。調査データや対話を積み重ねながら、課題や問題解決方法を考えるのが私たちのしごとです。 人間は生きるために自然を利用します。ただし、いまの使い方では、多くの生き物を絶滅させ、私たちが排出したCO2は森や海に吸収してもらいきれていません。日本自然保護協会が誕生した70年前は「自然保護」という言葉すらめずらしく、NPO法人制度もなかったので財団法人として活動してきましたが、自然保護の考え方や方法は日々変化しています。自然を守るのは、環境NGOや行政だけでなく企業や政治みんなで取り組むこととして、SDGsは学校で学ぶあたりまえのことになりました。今の世代が自然を使い尽くすのでなく、陸と海の30%は次世代に残す“30by30”という考え方や、自然を取り戻す“ネイチャーポジティブ”という言葉も生まれてきました。 各地を訪れると、その自然を守りたいと思って誰のためでもなく努力してくれた人たちがいたことがわかります。今度はあなたも誰かのために、自然とのつきあい方を考えませんか。日本自然保護協会の合言葉は、「自然のちからで、明日をひらく」。あなたのアクションを待っています。公益財団法人 日本自然保護協会事務局長しむら ともこ▶学生時代に知床や自然観察指導員、丸の内OL時代には世界遺産前の白神ブナ林保護活動にボランティア参加。1986年から日本自然保護協会スタッフ。1992年ブラジルの地球サミットに『自然保護』編集長として参加。環境教育、保護部などを経て現職。動物・自然・農業・海洋・環境・バイオ・化学・造園・フラワー系をめざす人へ志村 智子 氏自然を守るために必要なこととは?

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