分野別ガイドブックNo9
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 リハビリテーションという言葉には、「その人らしい生活に戻る」という意味があります。リハビリの専門職種は理学療法士のほか、作業療法士と言語聴覚士があり、患者さんを支援するための目的や方法によって、その役割が分かれます。 理学療法士はケガや病気の人に対し、動きを中心としたケアをする専門職です。たとえば寝たきりの状態から起きる、座る、立つ、歩くなどの動作に必要な「姿勢」を変えていき、さらにその状態を長く続けられるように、効率よく「体力」をつけるための支援を行います。現在の理学療法は予防分野にも拡大し、健康な人がケガをしないためのサポートも理学療法士の業務範囲となっています。 私が理学療法士という職業に出会ったのは皆さんと同じ高校生の頃でした。医療職の白衣姿にあこがれを持ち、当時はまだ珍しかった「患者さんに寄り添い支援をしながら、一緒に良くなっていく」仕事に魅力を感じました。卒業後は養成機関に進学して国家資格を取得、病院に10年、その後は特別養護老人ホームに勤務しました。病院ではケガや病気の患者さんのケアに従事し、特養ホームでは高齢者の生活支援を通じて、病院勤務で得た医療従事者としての知識を活かした支援の経験ができました。 今日、理学療法士としての生き方も幅が広くなり、病院勤務と並行して、専門知識を活かした発展的な職場が拡大しています。教育者や研究者をはじめ、作業現場のある企業で労働中の腰痛ケアや産前産後の社員を支援する産業理学療法士、エンジニアと協働で福祉機器の開発や介護・リハ機器輸入商社での検証のサポートなど多岐にわたります。男女の給与差もなく、現在、医療の現場でも「働き方改革」がすすめられていますので、今後は医師が行っている業務も一部拡大されるでしょう。さらに介護保険のデイサービス施設や自費診療のリハビリ施設などを起業することも可能です。すでに医療職=病院勤務ではないことを、ぜひとも知ってもらいたいです。 そして将来的には、小中高の学校内で理学療法士が従事することも期待されています。特に部活動での子どもたちのケガ予防や、特別支援学級では教育とリハビリを学内で行えるメリットがあります。現在は理学療法士の7〜8割が病院勤務ですが、高校生の皆さんが養成機関に進学しその後第一線で活躍する時代には、専門性を発揮して今よりも色々な働き方が創出されるでしょう。理学療法士の養成機関は全国にありますので、人と関わるのが好きな高校生は、是非とも職業として検討してみてください。─ 4 ─(東京医療学院大学保健医療学部 教授)公益社団法人 日本理学療法士協会 副会長よしいちはる▶静岡県出身。東京都立府中リハビリテーション専門学校(現:東京都立大学健康福祉学部理学療法学科)卒業、放送大学教養学部卒業学士、放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了、成城大学大学院文学研究科コミュニケーション学専攻博士課程単位取得満期退学。聖マリアンナ医科大学病院、正吉福祉会で臨床経験を積み、東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻教授。公益社団法人日本理学療法士協会常務理事を経て2021年6月より現職。医歯薬・看護・福祉・医療系をめざす人へ吉井 智晴 さん理学療法士は「姿勢」と「体力」を支援する身体づくりの専門家

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