つくにはBooksNo1_2025
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Special interview ★ Yu Sanoかって歩いていた際、徐々に建物の角が見え、次に特徴的な窓、建物全体が見えてきて、思わず声を上げて上司と喜び合いました。その光景は今でも目に焼き付いています。自分が設計した建築が、目の前に存在していることを実感したときは、とても嬉しかったですね。当たり前とされていることに疑問を持つ   仕事では、「当たり前だと思われていることを疑ってみる」ことを大切にしています。単に、「通常はこうやって作るよね」ではなく、「これは本当に必要なのか」など、当たり前だと思われていることを別の角度から考えてみることを常に意識しています。   例えば、日建設計東京ビル3階にあるトイレの設計に取り組んだときのことです。ジェンダーレストイレを計画するという要件の中で、よくよく考えてみると「ジェンダーレス」という言葉で形容すること自体が正しいのか疑問に思いました。そのように形容すると、男女どちらかの選択肢しかない従来のトイレに困っている性的少数者のためだけに作ったと捉えられてしまう可能性があります。私たちが目指したのは、性別を問わず誰もが快適に利用できるトイレだったので、「どのようなジェンダーレストイレを作るか」という問いを、「性別を問わず、誰もが使いたくなるトイレとはなにか」という根源的な問いに置き換えることで、新しいコンセプトのもと、新しい形式のトイレを実現することができました。建築を学んだからこそ見えてくることがたくさんあるもし目指す分野に迷っているなら、素直に自分が心惹かれるままに進んでみてほしいと思います。建築を学ぶことは、建築を通して社会や人間の「ありよう」を学ぶことに繋がっています。建築を学んだからこそ見えてくることがたくさんあります。ぜひ、自身の能力の限界を決めつけず、未来を切り開いてください。建築業界をめざす高校生へのメッセージ打合せを繰り返し、図面にまとめます。 建築の最大の面白さは、描いたものが実際の形になるという点にあると思います。建築は自分をはるかに超える大きな存在です。建物として単体で存在するだけではなく、社会・街の一部として存在しています。そのため責任とともに、やりがいも大きいのです。自分が設計した建築が目の前に存在する   仕事で印象に残っていることとしてまず思い浮かぶのが、初めて自分が携わった建築の設計と現場監理における経験です。高さ60mのテナントビルで、窓をランダムに配置した特徴的な外観を設計しました。初めて設計を担当するプロジェクトだったので、プレゼンの準備に手間取っており、プレゼンが間近に迫ったとき、上司が模型作りを手伝ってくれて、最後は二人でクタクタになりながらクライアントの元へ持っていったのを覚えています。 また現場監理段階で、完成間近に建物を覆う足場が外れた日のことです。現場に向

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