専門学校桑沢デザイン研究所 卒業生インタビュー

生駒 タカミツ

生駒 タカミツさん

株式会社 ICOMA
代表/プロダクトデザイナー
専門学校桑沢デザイン研究所 非常勤講師
桑沢デザイン研究所 専攻デザイン科プロダクトデザイン専攻卒業

プロダクトをいかに愛着を持ってもらえる存在に引き上げるか

現在

 個人活動として電動折りたたみバイク「タタメルバイク(仮称)」の製作を始め、2021年にタタメルバイクの会社 ICOMA Inc. を創業しました。CADで箱バイクの機構を作成しTwitterに投稿したところ、1万いいねくらい頂きました。知らない方々から意見をいただいたり、「こんなデザイン欲しいです」と言っていただいたりする体験が、講評で先生やクラスメイトから意見を貰った時以来の感覚ですごく楽しくて、バイクの製品化を意識し始めました。ミニチュア用のデータだったところからアップデートして、プレゼンシートにまとめたり、走れるモデルにするために部品を調達したりして、当時はまだ走れない状態だったのですが展示会に出展してみました。すると反応がとても良かったので、頑張って製品化しようと思い独立しました。現在は製品化を目指して、生産体制や安全性を検討しているところです。

プロダクトをいかに愛着を持ってもらえる存在に引き上げるか
タタメルバイク

桑沢デザイン研究所で授業も教えられていますが、どのような内容か教えてください。

 インターフェースという授業です。僕はテクノロジーを応用したプロダクトを手がけてきましたが、人と機械の中間となるインターフェースに関わる部分がこれからはもっと増えてくると思います。学生には、「インターフェースとは何か」と問いながら、テクノロジーを応用することをテーマに、自由に作りたいジャンルのものを作ってもらっています。とても実験的なので難しく感じる学生の方もいると思いますが、わりと好きなことをしてもらうので、自分の中にこういうアウトプットがあったんだと気付いてもらえたら嬉しいです。

在学時代

桑沢に入学されてから、印象的だった授業や課題はありますか?

 卒業制作ですね。「ロボットを作ります」と言いつつ、良い形が全然思いつかなくて。形が決まらないまま進んでいたのですが、別の授業課題をしているときにコンセントタップの人形を思いついたんです。頭と体が付け替えられる旅行のお供的なプロダクトなのですが、作らないともったいないと思ったので、卒業制作の品評会の2週間くらい前に「変えさせてください」と先生にお願いして、速攻でモデリングして、実際に作品発表をしました。今ほど話題になっていなかった3Dプリンターでモックアップも作ったりしていました。発想の時点で勝ち、みたいなところがあったので、タタメルバイクに通じる、「こういうアイデアどうですか」という提案だったかなと思います。
人が使うためにはどのような形が良いか、といったデザイナーの考えを知り、後に様々な製品開発に携われたのは、桑沢でプロダクトデザインを学んだおかげだと思っています。

在学時代
在学時代
卒業制作

未来

 若い方やバイクに乗ったことのない方も興味を持ってくれるくらい、コンテンツ的なバイクを作りたいと思っています。自分好みに変えられる余白性を持たせたいので、環境的なハードルを超え、かつデザイン的に広がりのある形を考えています。ICOMA Inc.は小さいメーカーなので、フォーマットを作って皆さんにいじって欲しいんです。だからこそオープンな開発をして、部品作成に3Dプリンターを取り入れるなど、カスタムしやすい構成にしています。
世の中のサービスが整理されていく方向に行くような絵を世の中は描きがちですが、実際は一人ひとりがいろいろな楽しさ・多様性を求めていると思っていて。そういう中で、新しい価値観を表現して、それをみんなが使えるようにデザインしていくデザイナーがもっと増えていくといいと思っています。

未来

原文は専門学校桑沢デザイン研究所 「【月刊インタビュー】 桑沢卒の素敵なあのひと」をご覧ください。

カワタアキナ

カワタアキナさん

イラストレーター/デザイナー

大学を経て桑沢デザイン研究所 夜間部 デザイン専攻科 ビジュアルデザインコース卒業

自分の個性を踏まえた上で成り立つのがイラスト

現在

就職してからはどのようなお仕事をされていますか?

 Web制作会社なので、Webデザインやコーディングをずっとやっていました。最近になって会社の方向性がブランドマーケティングに変わってきたので、印刷物やサービスのロゴのデザインなど、領域が広がってきています。私は主にデザイナーとして、ポスターやWebデザイン、コンセプト設計、アートディレクションも担当しています。手を動かして作る以前の、ブランディングやプロモーションの企画を考える役割に参加させてもらっているので、やっていて面白いですし、イラストレーターとして受注する立場ではなかなか踏み入れられない魅力があります。イラストレーターとしての自分と、デザイナーとしての自分が相互に生かしあっているのも実感するので、引き続き、両立したいです。

イラストレーターとしてのお仕事について伺わせてください。

 徐々に会社での仕事も覚えてきた頃、イラストを仕事にするために鈴木成一さんの装画塾に通い始めました。実際に出版される本のゲラを元に装画を描く課題に取り組んで、採用されるとそのまま出版される仕組みです。鈴木さんにアドバイスしていただきながら、装画の表現をどう考えるのかを学びました。私が描いたイラストで初めて採用していただいたのが、辻仁成さんの『真夜中の子供』です。そこから何か起こると思いきや、しばらく何も起こらなくて(笑)。『真夜中の子供』が装画のまとめサイトで掲載されたのを機に、編集者の方からご依頼を頂いたりして、徐々にお仕事が増えました。その後自身のWebサイトも作って作品を掲載し始めたので、そちらから知っていただく機会も増えています。
 会社では説明用のイラストを描く機会も多いのですが、装画は説明するイラストではなく、何かを予感させるような絵作りが大切だと考えています。本屋さんでたくさん本が並んでいる中で、目に留まるようにするには、読者の個人的な経験と紐づく何かを想起させるような余白があることが大切と思っているので、今はそういう部分に気を付けて描いています。

『真夜中の子供』装画1
『真夜中の子供』装画2
『真夜中の子供』装画

在学時代

桑沢に入るまでの経歴を教えてください。

 大学時代も絵を描くことから離れきれていなかったので、漠然とイラストレーターになれたらいいなという思いはあったのですが、そうはいっても、まずはイラストをどう考えていいかわからなかったんですよね。調べていくうちに「イラストはデザインだ」という考えを見つけて、「確かにそうだ。自分が描きたいように描くのではなく、目的のために描くのがイラストなんだ」とすごく腑に落ちました。目的があって、届けたい人がいて、伝えたいことがあって、さらに自分の個性を踏まえた上で成り立つのがイラストだと気づいたんです。それからはデザインを学ぶため、大学と受験予備校をダブルスクールしました。家族に応援してもらえたので、就職を急いではいなかったですね。

 受験校を探すうちに桑沢を知りました。実績も豊富で考え方も浮ついていないし、まだ何も分からない私でも、本質的な何かを言っているように感じられました。最終的には夜間部を受けたのですが、実は落ちまして。でも一年間何もしないわけにはいかないので、夜間附帯教育の基礎造形専攻にギリギリ滑り込んで、その翌年に改めて夜間部に入学しました。なので、桑沢で合計3年間は学んでいます。

基礎造形専攻はいかがでしたか?

 フィジカルな授業が多いのがとても印象的でした。切ったり貼ったり、外に出て見つけた素材を使って作品を作ったり。とにかく体を使って考えていくような、感覚器官を使って何かを作り出すアプローチが多かったですね。頭の中でこねくり回しているだけでは出てこない表現の幅を学べました。クラスメイトも幅広い年齢層や背景の方がいたので、そこでの会話や、一緒に作っていく中で得られる視点も、とても面白かったです。基礎造形専攻にイラストの授業はありませんが、まずはデザインやその考え方を学びたかったので、不満に感じませんでした。絵を描く方法を教えて欲しかったのではなく、どう考えてどう表現するのかなどの根っこの部分を学びたい気持ちが強かったからです。

夜間部のビジュアルデザイン専攻はいかがでしたか?

 基礎造形専攻を経て、さらにビジュアルデザインを学びたくなったので、夜間部に進みました。やはりイラストの授業が面白かったです。もりいくすお先生の授業をよく覚えていて、その授業も絵の描き方ではなく、どうやって自分なりに表現するのかを教えてくださる授業でした。クラスメイトの発想に対して、プロである先生からどういうアドバイスをするのかを見て、勉強になりました。後はポスターを作る授業もすごく楽しかったですね。ワンビジュアルで何かを伝えるグラフィックデザインの醍醐味というか、説明せずに何を感じさせるのか、自分の中でどうやってロジックを組み立てて実現するのかを考えるのも面白くて、勉強になりました。

2021年 桑沢デザイン研究所 イメージポスター
2021年 桑沢デザイン研究所 イメージポスター

原文は専門学校桑沢デザイン研究所 「【月刊インタビュー】 桑沢卒の素敵なあのひと」をご覧ください。

okamoto barba nami

okamoto barba namiさん

建築模型作家

大学を経て桑沢デザイン研究所 昼間部 総合デザイン科スペースデザイン専攻 卒業

模型の魅力を広めるために、世に送り出していく活動を始めました。

模型の魅力を広めるために、世に送り出していく活動を始めました。

現在

 現在の仕事としては、依頼を受ける機会もありますが、基本的に自主制作をしています。常に新作を作り続けているので、これからもっと頑張りたいですね。

建築模型とコンセプトについて教えてください。

 まず、建築模型がミニチュアと一線を画しているのは、「これから大きくするためのもの」であることだと思います。元々あるものを小さくして愛でるのではなく、実際に建てる想定で、提案したり実験したりする意味合いも大きいです。
 私は添景(てんけい)と呼ばれる演出目的の人・車・家具などの家具模型を得意としていて、特に家具が好きでした。家具を置くとその場所が問答無用で住空間になることに気づき、色々な空間構成を試しながら制作しています。例えば、ティーポットが持っているイメージ(溜める、注ぐ、保温など)と、家具のある空間を組み合わせたら、人は何を見出すかな?どんなことを考えるかな?とか。
 作品にストーリーを盛り込むことはあまりせず、できるだけプレーンになるようにしています。どういう風に見えるかは各々の想像力に任せたいと思っていて、結果的に作品を受け取った方の叙情的な部分に語りかけられていたら嬉しいです。

建築模型とコンセプトについて教えてください。

在学時代

1年次に印象的だった授業を教えてください。

 やっぱり基礎造形・立体ですね。始めは何をしているのか分からなくても、ずっと楽しかったです。
 基礎造形は講評もとても楽しかったです。誰かが創作物を見てくれて、講評をもらえるというのはとてもハッピーなことだと改めて感じました。まして授業で講評をしてくれるのはプロの先生方や志を同じくするクラスメイトです。大学の卒論のときに自分が書いた数万字単位の文章を読んでもらえることが果たしてこの先あるだろうか、と考えたのを経て桑沢に入学できたこともあり、より課題を大事にできたのではないかと思います。

在学時代

授業を受ける際、大事にしていたことは何ですか?

 課題意図の理解です。どんな力をつけるための課題なのか把握する、そのために設けられている課題の中のルールを守る、初回の授業は絶対に出る(笑)。ありがたいことに成績が良かったのですが、9割がた出席率が断然良かったからだと思います。
 基礎造形では、特に精度について教えてもらいましたね。とにかく手をきれいに保ったり、カッターの刃はマメに折ったり、正しい方向に刃を流す、正しい場所を押さえる、等々。模型バイトをしているとき、そういう基本を教わっていないと思わしき人が多いように感じました。
 1年次の基礎造形できれいに作る癖をつけた方がいいといろんな先生から何度も言われていたので、やはり大事だと思います。学生時代にしっかりと手を動かしておけることが桑沢のつよみです。社会に出たとき役に立つとは言い切れませんが、少なくとも生きる上での下支えのようなものにはなると思います。

ポートフォリオを拝見すると、コンセプトにしっかりとした説得力を感じます。

 実は在学中から、自分はデザインに向いてないと薄々気付いていました。人の話を聞いて、望んでいることを見極めてすり合わせていくのが苦手だと。そんなわけで課題に取り組む上で大事にしていたのは、「自分にとって切実かどうか」です。課題ごとに、コンセプトは自分の経験や価値観に基づいているか、納得できているか、選んだ形や素材はコンセプトに基づいているか、ちゃんと自分の好みになっているかを、常に念頭に置いていたので、結果的に作品をしっかりと作り上げられたのではないかなと思います。

ポートフォリオを拝見すると、コンセプトにしっかりとした説得力を感じます。

Twitter: https://twitter.com/o_barba_n
Instagram:https://www.instagram.com/okamotonami/

原文は専門学校桑沢デザイン研究所 「【月刊インタビュー】 桑沢卒の素敵なあのひと」をご覧ください。

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