教授に聞く、この学問の魅力

女子美術大学 芸術学部
アート・デザイン表現学科 メディア表現領域

テクノロジーを駆使して人の心に響く創作を。
最先端のテクノロジーを女性ならではの感性で生かせるクリエイターに。アニメーション、キャラクターデザイン、ゲーム、広告デザインや映像制作。さまざまな表現を学びながら、企業や研究所とのプロジェクトを通じて、社会で求められるクリエイティビティと自分らしい表現、高いスキルを身につけていきます。グローバルに活躍するメディアクリエイターとして、次世代のメディア表現をリードする人材を育てます。

季里教授

大阪教育大学美術専攻卒業後、大阪大学工学部電子工学科研究生を経て会社設立。教育番組やゲームなど様々な領域で3DCG・アニメーション・キャラクターデザインを中心に活動してきた。2011年より女子美術大学アート・デザイン表現学科教授。幅広い年齢層に「デジタル×クリエイティブ」の楽しさを伝えるワークショップを行っている。

感覚と能力を膨らませてくれるのがテクノロジー。わくわくの共有は嬉しい、楽しい。

感覚と能力を膨らませてくれるのがテクノロジー。わくわくの共有は嬉しい、楽しい。

いつもと違うからこそ、「もっと面白く授業できる!」と思える。

コロナ禍におけるオンラインでのメディア表現領域の授業についてお聞かせください。

 女子美術大学では、新型コロナウイルスから学生と教職員の健康、安全を第一に考えつつ新しい学びかたを模索するために、さまざまなチャレンジを行っています。全授業がオンラインで実施することが決定した2020年4月時点では、「何ができるか、できないのか」をいろんな面で手探りからのスタートでしたが、オンライン授業の準備を進めていくうちに「例年より絶対に面白くなる!」という確信が湧きました。メディア表現領域では、1年次でアートやデザインの基礎を学び、2年次以降はアニメーション映像や実写映像の制作、サウンド表現やストーリー表現、WEBデザインやグラフィックデザイン、3DCG、キャラクターデザイン、インタラクティブ表現など、多種多様なジャンルであらゆる最新テクノロジーを使った表現を学びます。学生は1人1台Macを持っていて、普段からオンラインでデータをやり取りしながら課題を進めていたので、特別な機材を使うような授業以外はスムーズにオンラインへの切り替えができると思いました。
 メディア表現領域で学ぶ学生は幅広い表現を学ぶため、スケジュールは常に忙しめですが、いつも何か描いたり作ったりと熱心で、休み時間に遊んでいるゲームも課題や研究の一環だったりして、遊びも制作も一緒になっているような雰囲気です。そんな活発な環境で私は主にキャラクターデザインやコンテンツ制作の演習授業、プロジェクト型の授業を担当しています。学生たちは、1年次でアートとデザインの基礎を学んだ後、2年次には「アート・デザイン表現演習」として地域社会の課題発見と解決をテーマにグループワークを行い、実際の仕事さながらにプレゼンテーションに挑みます。3年次以降は、学外の企業や団体と連携してプロジェクトを行う「プロジェクト&コラボレーション演習」が行われ、メディア表現領域とヒーリング表現領域の学生は、さまざまな産学協同プロジェクトのなかのひとつに参加します。「メディア表現に関わるということは、将来どんなジャンルの仕事をしても必ず自分と違う専門領域の人たちの協力が必要」、また「授業を通して自分と違う領域にいる人や、学外の企業・組織と交流を持ち、意見を交換し合い、助け合うことを学ぶのが大切」だと考えています。

時間と空間を超え、リモートでコラボして、記録して。

先ほどのお話があった、2年次のプロジェクト型授業「アート・デザイン表現演習」について、これまで大学の外へ出かけたり、学外から講師を招いてきたプロジェクト型の授業を、どのようにオンライン化したのでしょうか。

 「アート・デザイン表現演習」では、例年アート・デザイン表現学科4領域200人弱の学生が、3クラス40チームに分かれてグループワークを行ってきました。コロナ禍では6クラスそれぞれをアーティストやデザイナー、パフォーマーなどさまざまな専門家の先生が担当し、自身の発想法についての講義はYouTube限定公開であらかじめ準備していたため、ほかのクラスでも自由に見ることができ、学生はチャットへ感想を書き込んだり、ビデオ会議ツールで『いいね!』の代わりになる反応を出して、リアルタイムで参加しました。
 また、学生や先生が迷わないようテレビ番組のようにスケジュールを組んで、サポートを挟みながら授業を進め、クラスごとに模索して、LINEやチャットツールなど使えるものはどんどん導入し、分からないことはお互いに教え合う仕組みを作っていました。みんなに会えないなかで新しい授業を模索して、一緒に生放送を作り上げたという感じです。実際にやってみたらものすごく面白かったし、学生も手応えを感じたようでした。
 さらに進化したのは、3年次の「プロジェクト&コラボレーション演習」で、大手ゲーム企業をコラボレートパートナーに、6週間かけてゲームの研究と企画を発表しました。例年はカードに書き込んだアイデアを1枚の大きな模造紙に貼って分類し、グループの考えをまとめていく『KJ法』を使ったブレインストーミングを行いますが、『Google Jamboard』という電子ホワイトボードを使えばオンラインでも同じ作業ができます。模造紙のときは写真に撮って共有していましたが、今回は最初からデジタル資料として共有できました。既存のゲームの研究にも、チーム全員が同じゲームを購入し、同時にプレイしながら会議システムの音声を使ってアイデアを話し合うなど、新しい方法を取り入れ、これまでは、ゲーム会社のプロデューサーやプログラマーの方に大学へ来ていただく機会が限られていましたが、今回はオンラインのメリットを活かし、進捗を丁寧に見ていただきました。学生が熱心なので企業側も真剣にサポートしてくださって。チャットでは一日中質問と回答が飛び交って、プロのゲーム制作現場のようでした。
 時間と場所を飛び越え、素早く情報をやりとりして、わかりやすく記録を蓄積する。こうしたデジタルの強みを活かせる授業は、これから先もオンラインで行えると良いですね。また、別の授業では、ロサンゼルス在住のゲームクリエイターからオンラインで講演していただく機会も設けられました。自宅にいながら世界中の方々からお話を伺えるという貴重な機会になります。

変化し続けるテクノロジーを使って、誰かを幸せにする作品を生み出す。

学生の進路指導や今後の教育活動について、お聞かせください。

 学生から進路相談を受けた際は、「アーティストになるとしても、一度働いてみると楽しいよ」とアドバイスします。女子美の卒業生の進路は多様で、大学の専攻そのままの職業に就くだけではなく、美容や食など、自分の好きなことと学んだことを掛け合わせて、暮らしにアートを混ぜ込むような働きかたをする人もいます。ほかの大学と比べたとき、女子美は「みんなが制作だけでなくオシャレや生活を楽しんでいて、距離感が近くて仲がいい」、「一番を競い合ったり、争ったりする考えがなく、それぞれが持っている世界を尊重しながら、心から作ることを楽しんでいる人が多い」と感じます。お互いの作品をリスペクトしながら自分の作品も大切にするので、コミュニケーションが親密で、講評会はとても盛り上がります。
 また、教育活動について、30年前に教育とコンピューターを結びつける話をしたら『ありえない』と言われていましたし、10年前にオンライン授業の話をしても、実現できないと思われたでしょう。教育もテクノロジーも時代の変化とともに進化して、やっと繋がったと感じます。学生もコミュニティのあり方も変化していきますが、女子美ならではの良さをもっと活かせるように、授業も進化し続けようと思います。

最後にこの分野を目指す高校生へアドバイスをお願いします。

 大学へ進学するときは、まだやりたいことがハッキリせず、なんとなく好きとかやりたい気持ちがあるだけの人もいます。私は、学んでいくなかで自分の方向性を掴めば良いと考えているので、本当は受験する人みんなに来てほしい気持ちです。その人がどんな面白いことを考えていて、将来どんな人になるのかを想像して面接しています。テクノロジーを自分のものにして、使いこなすことで、グッと伸びそうな人を期待しています。

貴重なお話ありがとうございました。
(本ページの内容は「学びのすすめ_芸術系」と同内容です。)
(本記事は2021年2月に取材・撮影した内容をもとに制作しています。)

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