教授に聞く、この学問の魅力

横浜美術大学 美術学部
美術・デザイン学科 イラストレーションコース
イラストレーション専攻、絵本専攻

 イラストレーションは、言語によらずに制作者の思いを伝える表現の1つとして、アナログやデジタルを問わずありとあらゆるものに描かれている。
 横浜美術大学では、イラストレーションの理解とそれをベースにした総合的な芸術の学びを通して、コミュニケーションの大切さを理解し、これからの社会の中で活躍できる人材を育成するための取り組みを行っている。
 その中でも「絵本」の制作を通して、学生の可能性を見逃さずに育てていくことを大事にしている宮崎詞美教授にお話しをうかがった。

宮崎 詞美教授

宮崎 詞美教授

1998~2002年 朝日新聞社編集局デザイン部デザイナー
2005年 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入賞
2006年 京都市立芸術大学大学院美術研究科後期博士課程修了
2006~2008年 大阪市教育振興公社こどものための博物館キッズプラザ大阪指導員
2007年~ 横浜美術大学に着任(旧横浜美術短期大学)
2007~2015年 神戸芸術工科大学非常勤講師
2007~2019年 板橋区立美術館ティーンズ絵本のアトリエ講師
2020年 KSCS INTERNATIONAL INVITATION OF EXHIBISION COLORWORKS OF BEST COLOR AWORD受賞

絵本学会理事・広報委員・機関誌編集委員、日本国際児童図書評議会(JBBY)会員、博士(美術/絵本)
横浜美術大学 イラストレーション研究室 教授
担当授業:イラストレーション、エディトリアル・グラフィックデザイン、絵本制作、絵本論

世の中のありとあらゆる所で見かけるイラストレーションは
誰かのメッセージを伝えるツールになっている

世の中のありとあらゆる所で見かけるイラストレーションは誰かのメッセージを伝えるツールになっている

自分の内にあるものを「みえるかたち」にする表現

学科、コース、専攻について、どのようなことを教えられているのかお聞かせください。

 横浜美術大学のイラストレーションコースは、メッセージをどのようにして他者へ伝えるのかそのための方法のひとつとしてイラストレーションを捉えています。
 自分の内にあるものを「みえるかたち」にするためにどんな表現があるのか、そしてそれを社会に発信しコミュニケートすることの意味を、どんな可能性も捨てずに教員と学生の日常的な対話の中で探っていきます。
 課題では、基礎的な描写力を身につけた後にアナログの大型イラストレーションにチャレンジし、さらにカレンダーや書籍、公共ポスターなど実践的な媒体のイラストレーション制作を学びます。
 デジタル・アナログを問わず、どんな画材もどんな表現も、どんどん楽しみながらチャレンジしてみてほしいと思っています。

総合芸術を学べる課題「絵本制作」

総合芸術を学べる課題「絵本制作」

 特に「絵本制作」課題では、企画からイラストレーション制作、編集デザイン、印刷と製本まで学生自身の手で完成させることは本学の特色あるカリキュラムのひとつです。
 多くのプロセスを経て完成する絵本は、イラストレーションやグラフィックデザイン、さらにはプロダクトデザインや映像など様々な分野の学びが関わりあう、深いメッセージ性を持った総合芸術なのです。
 横浜美術大学の絵本制作教育には20年以上の歴史があり、今までの学生作品を蓄積して保管しており、数百冊におよびます。この絵本作品を教育・研究や地域社会に還元する取り組みを行っています。
 自分がつくった作品が永く残っていくこと、伝えられ続けていくことの大切さと喜びを学生に経験してもらいたいと願っています。

学生の可能性を一緒に育てていく

先生の授業について、特徴的なこと、心掛けられていることなどお聞かせください。

 「どんな可能性も捨てない。生かす。」です。
 私たち教員は今までに様々な経験を積み研究を重ねてきました。その経験を学生に伝えることができます。一方、これからの未来をつくるのは学生たちです。
 学生のアイデアの中にひそんでいるどんな小さな光も見逃さず、どんな短いしっぽもしっかりつかんで魅力的でオリジナリティあふれる作品へ昇華できるように一緒に考えていきます。
 絶対こうじゃなくちゃダメ、それは面白くない、という考えは捨てて「ここからどうすれば伝わる作品にできるのか、こわしたり組み立てたりしてみよう」と、調べたり実験したりしながら可能性を探っていくことを心掛けています。

常にアンテナを張る難しさと楽しさ、その先のときめき

常にアンテナを張る難しさと楽しさ、その先のときめき

ご担当分野の面白さ、難しさについてお聞かせください。

 あらゆる媒体や表現のイラストレーションがあふれる現代において、常にアンテナを張っていることです。これは難しくもあり楽しくもあるもので、学生から学ぶことも多々あります。
 新しい画材や表現、媒体や文化を知って研究を深めていく中で、温故知新を改めて確認できた時は点と線がつながるようなときめきがあり、わくわくしながら学生に伝えたくなります。

イラストを描くだけじゃない

卒業生の方の主な就職先について教えてください。

●グラフィックデザイナーやWEBデザイナー、映像制作、報道などクリエイティブ職
●企画、営業、販売職(画材や文房具、書籍など)
●中学校美術科教諭、絵画・工作教室講師など教育職
●ネイリスト、ファッションアドバイザーなど美容系職
●イラストレーター、絵本作家などフリーランスのクリエイター
●俳優、声優など
●出版社の編集者
●ギャラリー(画廊)スタッフ
 …様々な分野、多岐にわたります。
 モノづくりを通じて身につけたことは、どんな分野においても活躍できるちからになっていると感じています。

自分の内なるものの表現の仕方を探している学生に

自分の内なるものの表現の仕方を探している学生に

どんな学生たちに学びに来て欲しいとお考えですか?

 胸の奥に秘めた想いを、どう表現してどこへ発信すると良いのか、手探りしている学生たちとの出会いを楽しみにしています。

未来のクリエイターにメッセージをお願いします。

 どんな小さな光も見逃さず、短いしっぽも手放さないで、ときめきを大切にしてくださいね。
 それらはきっとあなたが歩んでいく力になることでしょう。

貴重なお話ありがとうございました。

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