介護福祉業界の今
「待遇改善」「DXの導入」新たな道を歩み始めた介護業界に迫る
介護職員2040年に57万人以上が不足
2007年、65歳以上の人口が全体の21%を超え、日本は超高齢社会に突入しました。そして十年以上経過し、昨年の割合は29.1%と過去最高を記録。全人口に対する高齢者の割合は年々増加しています。そこで重要視されるのが高齢者の世話や介抱をする介護事業です。
厚労省は2040年度の介護業界で必要な介護職員数は約272万人と予測しました。ただし、実際のところは2021年度214.9万人、2022年度は215.4万人と職員数の確保は上手くいっていないのが現状です。今後、2040年度までに必要な介護職員をそろえるには年2~3万人ペースで人材を確保していく必要があります。
(参照:総務省「統計からみた我が国の高齢者」/厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について)
都道府県別では、2040年度に最も介護職員が不足するのは東京都で約7.6万人、次いで神奈川県約5.3万人、埼玉県約4.5万人、大阪府約4.1万人、愛知県で約4万人と予測されています。やはり人口が多ければ介護が必要な人も自然と増えるため、困難な状況に直面する可能性が高くなるといえます。
一方、2040年度に必要な介護職員数に対する不足数の割合が高い都道府県は沖縄県36.3%で最も高く、次いで栃木県、埼玉県、千葉県、東京都などの順に不足度合いが高くなっています。
介護業界が人手不足に陥る背景
ますます人手が必要となる産業
総務省統計局の「人口推計」によると、2023年の総人口は1億2,435万2,000人。前年に比べ59万5千人(-0.48%)の減少となり13年連続で減少しています。このうち15~64歳の生産年齢人口は約7,395万人、65歳以上の高齢者は約3,623万人です。総人口における15~64歳の割合は59.5%で過去2番目の低さとなりました。結果として、さまざまな業界で人材不足が深刻化しています。介護業界もそのひとつです。介護の仕事は肉体的だけではなく、精神的にも大きな負担を強いられることがあります。さらに今後の社会で重要な職業ではあるにも関わらず、待遇が恵まれているという状況でもないことが人手不足の大きな要因のひとつといえるでしょう。
このような待遇を改善するため、国は今年2月より「介護職員一人あたり月額平均6000円程度の賃上げ」を実施。国だけではなく、東京都をはじめ各自治体でも介護職員らの給与を引き上げる補助制度などをスタートさせています。待遇を改善することで新たな介護職員を増やすと共に退職者を減らすのが目的です。今、国や自治体は介護業界に対して危機感を抱き始めており、解決するためにさまざまな施策を行い、これからの介護業界を支えようとしています。
(参照:「厚生労働省:令和6年度報酬改定と賃上げについて」)
介護DXが介護業界を変える!?
待遇改善など業界全体が変化していく一方で、業務自体に関して注目されているのが「DX」です。「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、「デジタル技術によって、商品やビジネスのあり方自体を変えること」を指す言葉です。単にデジタル技術を導入するだけでなく、それによって業務やサービス自体をよりよく改善し、成果を上げるまでを含めて「DX」と言っています。介護DXの導入のメリットとして、上記にも上げていますが「介護職員の現場での業務が効率化する」「現場負担を軽減することで現場環境を改善し、介護職員の定着率の向上させる」「よりよいサービスの提供」などがあげられており、大きな期待が寄せられています。
【介護DXでできること】
介護ロボット、介護機器の導入
移乗介助、排泄支援、見守り・コミュニケーションなど
介護ソフトによるペーパーレス化
利用者情報の管理、介護記録の作成と管理、売上や入金の管理など
グループウェアによるコミュニケーションの効率化
在席確認、データファイルの共有、スケジュール管理など
ほか多数
介護業界の未来
厚生労働省では介護事業所の生産性向上、また働きやすい職場づくりの支援として、介護現場でのテクノロジーの導入を実施しています。「介護ロボット等の導入支援」や「ICT等の導入支援」などを進めており、導入件数も毎年増加しています。
1950年代に日本でホームヘルパー事業がスタートしてから約70年。待遇改善や介護DXなど、介護業界は大きな変わり始めています。ただ、まだまだ課題もあります。未来の課題が予測されている今、介護業界全体で「現場で働く人」「サポートを受けられる人」両者が満足できるよう、努力を止めずに進むことが大切かと思われます。
(参照:厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」より」)