STEP.5 小論文の主張を組み立てよう
1. 主張を組み立てる
設問要求を確認できたらいよいよ小論文の核となる、主張を組み立てる過程を学んでいきましょう。テーマに関する知識を基に自らの主張を構築していく訳ですが、ここで重要なのが、テーマに対する疑問点を挙げながらどのような材料が必要か、どのように答えを導くかを明確にしていくことです。
それでは、以下のテーマ型問題を例題にポイントをおさえていきましょう。
学科試験の対策を効率化させるうえで、SNS 機能をはじめとするスマートフォンの使用は有効でしょうか。600 字以内で述べなさい。
「学科試験対策やスマートフォン、SNS 機能」をテーマとし、「スマートフォンが有効か否か(⇒主張を選択させる問題)」を考えるべき「テーマ型問題」であることを認識しておく
(1)テーマの整理:知っていること・疑問に思ったことを挙げ、必要となる材料を整理する。
- Q1「学科試験」とは何を指すだろう?
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- 教科の試験=英・国・数・理・社 など
- 学科試験の対策:用語・公式などの記憶/問題を解く経験を積む/教科書や問題集の繰り返し/授業内容の復習
- Q2スマートフォンの機能にはどんなものがあるだろう?
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- カメラ機能
- SNS 機能:友人・知人との交流/情報検索/動画サイト/人脈形成
- アプリ(アプリケーション):日本人一人あたりが使うアプリケーションの平均数は40個。
- Q3学習と関係のあるスマートフォンの機能、その利点・欠点にはどのようなものがある?
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- 勉強アプリ/勉強系動画/勉強用アカウントで、専門的なコミュニティで情報交換。
- 近年の脳科学では、スマートフォンの通知は脳に強い刺激を与え、集中力を低下させるという研究結果が出されている。
これ程の情報を全て詳しく書き出す必要はありません。考察の材料として、問題用紙の余白などに箇条書きでメモをしておきましょう。
(2)論点の設定:設問を分析し、どのように答えを導くかを考える。
- ⇒ 問題文中にある「学科試験対策の効率化」とはどういうことだろうか?
- ⇒ 教科について多くの知識を記憶すること。また、より多くの問題を解く経験を積むことだ。
- ➡ より多くの知識の記憶、より多くの問題を解く経験の蓄積に、スマートフォンは役立つかどうかを考える必要がある。(論点の設定)
「論点」とは議論するべきことの中心を意味します。与えられた課題を整理し、どのように答えを出すべきかを考える基準となります。
(3)主張を決定: 論点を基に問への答え(= 主張)を考える。
- ⇒ スマートフォンには学習用のSNS やアプリケーション以外にも多数の通知が届く。
- ⇒ 近年の脳科学の研究では、それらの通知は脳への刺激が強く、集中力を低下させるという。
- ⇒ 集中力を欠く状態で学習成果を上げることは困難だ。
- ⇒ 試験の内容は教科書や授業から出題されるため、それらの復習が最も近道だ。
- ➡ よって、スマートフォンの活用は学習の効率化につながらない。(主張)
手持ちの知識を材料に、解き明かすべき問題を絞り込みながら、筆者なりの主張にたどり着くことができました。何を答えるかが明確になって初めて、文章を書き出すことが可能になります。
この主張だけが正解ではありませんので、あなたであればこのテーマをどう論じるかこの後考えてみましょう。
2. 出題テーマと志望分野の関係
看護志望だけれど医療には興味がない。このような学生を求める看護学校はあるでしょうか。入学試験における小論文でも、志望分野に関心を持ち、自ら考えを導ける人材かどうかが問われています。主張を構築する際には、志望する分野の観点から主張を述べることも意識しましょう。
このことは、以下の例のような、規模の大きいテーマが出題された際にも役立ちます。志望分野の観点から絞り込むことで、自分が興味のあるテーマを設定することができ、論じやすくなります。
- < 例 >「新型コロナウイルスと社会」がテーマとなる場合・・
- ⇒「新型コロナウイルスと社会」から、何が思いつくだろうか?
⇒強い感染力を持つウイルスへの対処として、多くの人の社会活動が制限された。
⇒そのことがもたらしたものや明らかにしたことはあるだろうか? -
- 文系学部志望の場合
- ⇒行動自粛によって、多くの芸術や芸能関連の公演が中止され、文化的な表現活動は衰退した。
⇒一方、アマビエのような江戸期に疫病を予言した妖怪が「おうち時間」の中で描かれ、SNS上で流行する現象も起きた。
⇒文化は疫病や災害で衰微することもあるが、それらを題材に新たな表現を社会に生み出すこともある。
- 理工系学部志望の場合
- ⇒社会活動が制限される中、一定の活動を可能にしたのがマスクだ。
⇒マスクの普及には、ウイルスの感染媒介となる飛沫などを可視化する工学技術の発達が影響していた。
⇒社会が不測の事態を抱えることに備え、科学的な理論や技術は常に蓄積されていくことが求められる。
- 看護医療系志望の場合
- ⇒感染症への恐怖心が増幅し、病院で働く医療従事者への差別や偏見につながった。
⇒医療崩壊も深刻化する中で、医療従事者が抱える働きづらさは安定した医療提供を阻害する要因となる。
⇒安定した医療確保のためにも、疾病の正しい理解と医療行為の尊重は社会的な課題だ。
3. プログラムを作ろう
先ほどの例題を実際に書きおこすまでの手順を確認しましょう。60分600字以内の想定です。
時間配分 | 作成の流れ | ポイント | 構成メモ(例) |
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10~15分 | (1)設問文理解 | 設問文から、出題形式や問われていることを把握。 ➡【STEP4】 |
学科試験の対策にスマートフォンの使用が効率的か否かを述べる。 ⇒テーマ型(主張を選択させる問題) |
(2)テーマに関する知識・疑問点を整理 | テーマに関する知識・情報を整理。 ➡【STEP5】 |
・学科試験の対策の内容 ・スマートフォンの機能や利点・欠点 ・効率化の意味 |
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(3)主張を構築 | 問いに対する答え(= 主張)を考える。 ➡【STEP5】 |
では、スマートフォンは学習の効率化に役立つか? ⇒脳科学の成果では、スマートフォンの通知は、脳を刺激し、集中力を低下させる。 ⇒集中力を欠く状態で学習成果を上げることは困難だ。 ⇒試験は授業・教科書から出題されるため、その復習が近道だ。 ⇒よって、スマートフォンは学習の効率化につながらない。 |
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(4)文章を構成する | ①序論:主張や論点設定。 ②本論:主張を証明する根拠を示す。 ③結論:①~②をまとめる。 ➡【STEP3】 |
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40分 | (5)記述 | 文章作成のルールを守り、丁寧に書く。 ➡【STEP2】 |
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5~10分 | 見直しをする | ・1段落書くごとに誤りがないか確認する。 ・最後に全体を確認する。 |
学科試験の対策にスマートフォンを使うことは有効ではない。SNSなどの機能には、より多くの知識を吸収し、問題を多く解くのに便利なものはある。しかし、それらを稼働させるスマートフォン自体に、学習の効率性を落とす危険性がある。
スマートフォンは、コミュニケーションや情報の送受信や検索、またさまざまな興味関心を満たす手段として広く利用されている。現在の日本人一人あたりが使うスマートフォンのアプリケーションは40個にも及ぶと報告されており、それに伴い膨大な通知数が発生することが分かる。そして、近年の脳科学の成果によれば、スマートフォンの通知が人間の脳に与える刺激は強く、結果的に物事に取り組む際の集中力を低下させるという。このような要素を抱えながらスマートフォンで学習することは効率的とは言えない。
SNS中の豊富な情報量や教材には、学習に役立つものがあることは否定しない。しかし、そもそも学習成果を測るために行われる定期試験などの学科試験は学校の授業や教科書を基に出題される。つまり、学校教育における授業内容の復習に注力し、教科書や付随する問題集の内容を着実におさえることこそ学習成果を上げる近道であり、効率的だといえる。
以上のように、学科試験の勉強に効率的に取り組むうえで集中力は欠かせない。学習に集中して打ち込むためにも、刺激の強いSNSやスマートフォンとは距離を置き、切り換えて臨むことが有効であると考える。
(597文字)
目次
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STEP.1
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STEP.2
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STEP.3
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STEP.4
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STEP.5
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STEP.6